石巻専修大学人間学部人間文化学科人間教育学科(AO入試A日程)小論文模範解答例と解説
ごきげんよう。kikuchiです。今回は石巻専修大学の小論文の解答解説を書いてみました。論題はこちらです。
レヴィナスという思想家は、人間の「かけがえのなさ」というのは「比較を許さないということ」である、と言っています。あなたは、「比較を許さない」人間の「かけがえのなさ」についてどのように考えますか?600字以内で、あなたの考えを書いてください。
《着眼点》
①「かけがえのなさ」についての定義を考える
②「比較」とはどういうことか考える
③論点を明確にする
①「かけがえのなさ」についての定義を考える
まずは、あいまいな言葉は定義づけをすることが必要です。「かけがえのなさ」つまり「かけがえがないこと」とはどういうことか、それを考えます。
②「比較」とはどういうことか考える
確かに、人間の価値はかけがえのないものだということは、容易に理解できますし、首肯できることでしょう。そうでなければ、価値のない人間、というものが存在することになり、それは私たち人間の尊厳を失うことにつながります。
③論点を明確にする
しかし、単純に人間は比較できず、かけがえのないものだ、といったところで、それはレヴィナスに同意したにすぎません。解答者が求められているのは、「自分がどのように考えるか」です。ここでは、レヴィナスに同意するにしても、「本当にその通りなのか」と疑いをもつことが必要です。答案はこの点を基に考えてみました。
それでは、どうぞ。
《解答例》
「比較を許さない」人間の「かけがえのなさ」について、確かに、原則として人間はその存在自体に価値があることは間違いないが、人間は他者との比較をしなければ自身の価値を認識できないという自己矛盾を抱えていると考える。
まず、かけがえがないというのは、人間自体が固有の価値を有しており、他の存在との交換ができないということだ。他の存在との比較をした途端に、何らかの価値尺度における比較が生まれ、優劣が定められる。それを許さないことで、人間はかけがえのないもの足り得る。人それぞれの尊厳を守るという意味で、この考えに異論をはさむ余地はない。
しかしながら、私たちは自己の価値を、他との比較なしで認識し得るだろうか。他の存在との比較を通してしか、人間は自身の優劣を認識し得ず、したがって、人間は、個人としては比較によってのみ自身の価値を体感できると考える。なぜなら、人間は、何らかの社会の中でしか存在し得ない。それゆえに、他者より自分が優れているという感覚をもたない限り、自身の優れた点を発見できないからだ。
このように、人間は、個人の尊厳を守るという観点からすれば、比較を許さないことでかけがえのなさを守ることができる。その一方で、個人としては、比較しなければ自身の価値を感じることはできない。したがって、人間とは、それ自身が比較を許さないと同時に比較しなければ価値を感じ得ない、本来的に矛盾した存在なのだと考える。
(600字)
何かの参考になれば幸いです。それでは♨