’17愛知医科大学2月2日実施分小論文模範解答例と解説

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ごきげんよう。kikuchiです。今回は愛知医科大学からの出題です。

あなたが、インターネット上のサイトで次のような相談を見つけ、これに答えようと考えているとする。あなたならどのように答えるか、600字以内で述べよ。

 

「医学部を目指して浪人生活を送っています。医者になりたいと思ったきっかけは自分自身が心の病気をしたことです。将来は精神科医になりたいと思っています。ただ、心配なことがあるのです。私は小さい頃から死に対して恐怖心をもっていました。会ったことのない人でも訃報を聞くと怖くて夜も眠れなくなってしまうのです。こんなことでは医学部に進んでも、遺体を解剖できるのか、医師になっても患者さんにしっかりかかわれるのか、不安で仕方がありません。どうすれば恐怖心を軽減できるのでしょうか?」

 

[’17愛知医科大学2月2日実施分]

 

《解説》

①リード文に注目する

リード文に、「インターネット上のサイトで」とあります。みなさんも一度は見たことがある、投稿された質問に誰かが答えるサイトだと思われます。たとえば、これが「唯一無二の親友からの相談」だった場合と、この問題の場合は異なります。すなわち、匿名だという点です。匿名であるということを意識した答案をするべきでしょう。

 

②問題の背景にある出題者の意図を考える

①にも書きましたが、インターネット上のサイトに投稿された相談に回答する行為自体について考えてみます。この行為において、相手も自分もお互いのことを知り得ません。その状況で、安易に質問者の人生相談に回答することが果たして適切なのでしょうか。出題者の問題意識はそこにあるのではないでしょうか。つまり、インターネットが発達した現代社会において、「匿名」がもたらす悪影響を案じているのではないかと推察できます。このことを認識した上で解答します。

 

③医学部受験者としてふさわしい「想像力」を意識する

あくまでもこの小論文は医学部からの出題です。したがって、医師になる者として、患者やその家族に配慮できることを示す必要があります。この答案においても、「質問者」に頭ごなしに説教をすることや、自分の考えを押し付けるようなことは避けるべきでしょう。相手、つまり質問者のおかれた立場を踏まえた解答をすべきだと考えます。

 

それでは、どうぞ。

 

《解答例》

 質問者の方へ。

 インターネットという匿名の場で質問することについて、考えてみてください。私はあなたについて、質問文からしか知ることはできません。あなたも、回答をする人がどのような人間なのかはわかりません。

 仮に、回答を得て自分が納得して、それに従ったとします。もしその結果が悪いものであった場合に、あなたはその回答をした匿名の誰かに責任転嫁をしてしまうのではないでしょうか。

 また、よい結果だったとしても、それはあなた自身から生み出された結果ではありません。匿名の誰かに救われたということに、未来のあなたは納得できるでしょうか。

 逆に、納得できなかったとすると、あなたは同じようにインターネット上の他のサイトで答を見つけようとするのではないでしょうか。そしてそれを繰り返すことになるでしょう。

 そもそも、あなたがもっている「死」に対する恐怖心も、同じようなものだと思います。「死」は誰もが怖れ、悩んでしまうものです。それは「死」が何なのか、答えが究極的に出るものではないからです。つまり、あなたが追い求めている「答え」はいずれにしてもある意味で「匿名」であり、「誰にもわからない」ものなのです。

 もちろん、この場でご質問されているということは、自分では答えが見つからなくて弱り果てていることは想像できます。ただ、根本的に答えが見つからない、ご自身の人生の答えを、匿名の誰かに託すことを考え直してほしいと願います。

(600字)

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